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■U2スレーン城での凱旋ライブ、待望の日本版DVD発売!
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U2
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スレーン城での凱旋ライブ、待望の日本版DVD発売!

2001年9月1日、ダブリン郊外のスレーン城で行われたU2のライブの模様を収めたDVD日本版が、遂に発売された!

ELEVATION TOURにおける最大のハイライトというべきアイルランドでの2回のライブは、1日で8万人を集める大規模なもので、ファンの間では既に伝説となりつつある。
それは、BONOの父親Bobが亡くなった直後の地元凱旋ライブ、スレーン城がステージの傍らで浮かび上がり、熱狂的なファンが集まる、これ以上ないエモーショナルなステージだったからである。

 

■1  Elevation


Elevation Tourのオープニングを飾るナンバー。
4人がステージ後方から登場し,Egdeのギターがかき鳴らされると,8万人の観客が揺れ,大地はうごめく。
初めから気分は,一気に「高められて」いくのである。

 

■2 Beautiful Day

スレーン城が浮かび上がり,Bonoの声が空に響き渡る。
夜ではあるが,天気と自然に恵まれ,まさに"It's a Beautiful Day"なのである。

ここで,メンバーの衣装に注目してみると,この日のEdgeのTシャツのナンバーは,7である。EdgeはしばしばLiveを行う地元のスポーツ界の有名選手の背番号に因んだTシャツを着ているが,この7という番号が,アイルランドの有名選手に因んだかは不明である。

Bonoの衣装は,いつもながら格好良いのか悪いのか,判別しにくいスタイルである。"Bonoならでは"と言うべきか。黒地にオレンジのジャケットとパンツ。このDVDのジャケットの色であることは,単なる偶然だろうか。。。

AdamとLarryの格好は、独自のスタイルを貫いているというか,いつもながらクールである。
もしピーコがチェックしたとするなら,Adamに一番をあげるかもしれない。

 
■3  Until The End Of The World

曲の冒頭,Edgeのギターに電気ショックを受けるBono。
Zoo TVの頃から変わらぬパフォーマンスが見られる。
Bonoのステージにおけるスタイルは変わっているようでいて,ちゃんとツボは押さえてくれているのである。
Bonoが牛になってEdgeと格闘するのもお約束である。
最後倒れ込んだBonoが,「はぁはぁ」と息があがっているのは,「中年オヤジ」の頑張りと言うかご愛敬というものであろう。

 
■4  New Year's Day

この曲から,Bonoはサングラスを外して歌う。
サングラスを掛けて歌うようになった90年代から,80年代への立ち帰りである。
Bonoは本能的に知っているのである。
この曲はサングラスを掛けて歌う曲ではないことを。

そして,アイルランドの国旗をまとうBono。
故郷に住み,故郷を大切にしてきたU2だからこそ,Bonoが身にまとって絵になるのだろう。
Bonoは言う。"Close your eyes. Imagine..."
目を閉じると,白旗を掲げ馬に乗っている若きU2の姿が,思い浮かぶ人もいるだろうか。

この曲のプロモ撮影時,Edgeが馬に乗れなかったために,代わりの人が乗っていたことは,割と知られたエピソードである。

 
■5 Out Of Control

このLiveのハイライトとも言える,感動的なBonoの話が聴ける。20年以上経っても,U2は原点を見失っていないことが分かる。

エネルギーが余り過ぎ,ステージを所狭しと動き回っていた20数年前。Bonoはスピーカーの上に登り,Edgeは長髪をなびかせ,Adamは弾くたびにポーズを決め,Larryは苦しそうに一生懸命叩く。
Bonoはまさに"Out Of Control"な状態で,皆少し青くさかった当時と比べて,随分スマートになった感じはする。しかし,U2は良い意味で変わっていないし,改めて曲の良さを感じさせてくれるのである。
Bonoに肩を抱かれて,はりきっているAdam。
Adamの"はにかむ"ような笑顔がステキである。

 
■6 Sunday Bloody Sunday

Bonoは言う。
"Push Hands to the air." 「手を空にかざすんだ。」
そして,オマー爆破事件の犠牲者を悼み,こう叫ぶ。
"No More"「二度と起こしてはならない。」
血の日曜日事件に限らず,パレスチナ問題などに対しても,叫びたくなる一言である。

オマー爆破事件とは,1998年8月15日,北アイルランドの街オマーで,カトリック系のReal IRA(真のIRA)が起こした疑いの濃い,悲惨な爆破テロ事件である。
IRAの中でも過激派と言うべきReal IRAが起こしたとされるこの事件により,主にプロテスタント系の住民29名が死亡,多くの者が怪我をした。
Bonoは,この29名の犠牲者の名を全員あげることで,あまりに多くの命が無惨に奪われたこと,二度とおこさないで欲しいという願いを,観客に訴えているように思えるのである。

 
■7  Wake Up Dead Man

犠牲者を悼むBonoの歌声が,胸に沁みる。
「POP」制作時,Pearl JamのEddie Vederが曲を聴いて,アルバムに入れた方が良いと言ったというのは、割と知られた話であるが,U2がこの曲を歌い続けているということは,Eddieの判断は正しかったと言えるだろう。
Michael HutchenceやBobを亡くしたり,Bonoは辛い別れを経験しているが,この曲を歌いながら、死者と語り合っているような気がするのは,気のせいであろうか。

 
■8 Stuck In A Moment You Can't Get Out Of

曲の冒頭,Bonoのファルセットが心地よい。
Bonoは90年代からファルセットを多用するようになったが,そのことがBonoの歌の幅を広げてくれた気がするのである。
シドニーで行われたZoo-TV Live においてBonoがマクフィスト姿で歌った,"Can't Help Falling in Love"は,その好例である。
かわって,曲の最後にEdgeとBonoの2人の掛け合いがあるが,ここではEdgeが,魅力あるファルセットを聞かせてくれる。U2はツインボーカルとまでは言えないものの,Edgeの歌声があるからこそ,曲がより輝くのではないだろうか。

 

■9 Kite


Bonoが亡くなった父のBobに捧げた曲である。
Bonoは言う。
"Communication", "Talk each other", "Big idea"
まるで天国へと旅だったボブと会話しているような,Bonoの顔が印象的である。

 
■10  Angel Of Harlem

BonoとThe Edgeが視線を交わし笑いあい,肩を組んで歌うシーンを見ると,変わらぬ友情を感じさせてくれる。
ファンがU2に対して特別な思いを持つ要因の一つに,メンバーが不変で仲が良いことがあるのではないかと思われる。
4人の内,1人欠けても"U2"ではなくなってしまうのである。
内部がぎくしゃくしているバンドの演奏を見ても,そこから魔法を感じることは難しい。
Harmonyとは調和であり,メンバー間の信頼が厚いからこそ,U2の奏でる音はハーモニーとなり,魔法となるのだろう。

 
■11 Desire

4人がステージ前面に出てきて演奏する,ファンにとってはありがたい,恒例の演出が見られる。
普段は後ろに控えているAdamとLarryの演奏ぶりと表情が,たっぷりと見えるのである。
この2人のリズム隊は,映画"Mission Impossible"のテーマ曲を担当したことでもよく知られているように,最強のリズム隊と言って良いだろう。

2人のうちLarryは,バンド結成の一番の功労者と言えるだろう。もしLarryが学校の掲示板にバンドメンバー募集しなかったとしたら,今のU2は存在しなかっただろうから。
最近では,"Electrical Storm"のプロモで,Larryファンの女性の心拍数を急上昇させたと言われる,迫真のラブシーンを展開してくれている。シャイなLarryも40歳になって開眼したのか。今後が要注目である。

Adamは今やすっかり落ち着いた観があるが,昔は暴れん坊だった。少年時代には,学校を放校になったり,ヒッピー風の格好をしていた。そしてU2の中では一番セレブな生活を送り,大物ぶりを発揮。モデルのNaomi Campbellと結婚直前まで行った。そんなAdamの"大物"ぶりは,Achtung Babyのジャケットでも確認できる。

 
■12 Staring At The Sun

この曲は,Pop Mart Tourの最初のころは,アルバムに近い音で4人で演奏していたが,Liveではタイミングが合いにくかったようで,中断するハプニングも起きた。
そのため,BonoとEdgeの2人が中心のアコギスタイルに変わって,長いこと続いている。そのことは,曲の良さをシンプル&ストレートに感じさせてくれることに繋がって,結果的に良かったのではないだろうか。
U2の曲の良さは、アコギでシンプルに演奏した際,よりストレートに胸に迫ってくるのは,決して錯覚ではないだろう。
2人のハモリ具合が素晴らしい。
最後,肩を抱き合ってお互いを称える微笑ましい一場面が見られる。

 
■13 All I Want Is You


Bonoは曲の冒頭で言う。
"I'd like to dedicate this song to my beautiful wife , Ali."
そう,これはBonoが改めて,妻Alisonに捧げた歌なのである。

美しい奥様Aliの姿は, "Sweetest Thing"のプロモで確認できる。2001年のグラミー賞の授賞式などでも,常にBonoの傍らにいた。
BonoとAlisonの関係を簡単に紹介するなら,出会いはダブリンのMount Temple Schoolの時である。
1974年,Bonoが祖父と母を相次いで亡くし,大きなショックを受けている時に,AliがBonoの面倒をみたことなどをきっかけにして,親しくなったようである。
そんな2人が年月を経て,1982年8月21日に結婚をした。1985年にはLive AidでのU2の名を広めた演奏を行った後,2人はエチオピアで数週間,子どもたちへの教育と飢餓救済活動に参加した。その時の2人の飾らない姿の写真は,とても印象的である。
そしてAlisonは今や,4人の子どもを持つ肝っ玉母さんである。4人の面倒を見ながら,チェルノブイリ原発事故の後遺症に悩む子どもたちを助ける活動も行っているのだから,凄いと言うべきか。

そんなAliに捧げた曲を歌っている時のBonoの顔は,何とも爽やかである。ハートの中で歌いながら,Aliに対する愛情を表現していたのかもしれない。
客に水!?をぶっかけられて,“All I want is Fucking YOU!!”と笑いながら叫ぶのもご愛敬だろう。

 

■14  Where The Streets Have No Name

この曲のライブ版は特に,いつ聴いても全身を貫く高揚感を与えてくれる。これほど強い魔力を持った曲は,この世にそう多くはないだろう。

この曲を普通に楽しんでも勿論良いが,知らない方のために別の楽しみ方をご紹介。
PCで見られるお得な機能として,曲の演奏中360°見渡せる機能が付いているが,ステージを駆け回るBonoが,意外な高速移動をしていることが分かる。
走るBonoを体感したければ,是非ともお勧めである。

 
■15  Pride (In The Name Of Love)

8万人の"Oh, Oh Oh Oh"が聴ける。

1998年の東京ドーム公演では,途中で声が小さくなってしまうなど,残念なこともあったが,Slaneの8万人は手を挙げつつ合唱しているようである。
ステージからカメラを引いていくシーンがあるが,やはり相当な人数である。

Slane城付近は電車で行くこともできないため,100台以上のバスが運行したらしいが,参加者によると待たされたりと大変だったようである。
Slaneの当日は,U2をトリとしてMobyやNelly Furtado,Ashも演奏をしたので,U2をハートの外側最前列で見るためには,数時間も動かずにいる必要があったようである。
また,チケットチェックが2重3重にあり,偽造のチケットを掴まされて苦労した人もいたようである。
この巨大なSlane Liveを実施するために,アイルランドの議会で討議されるなど,実施面でも苦労があったようである。
そんな様々な人々の数々の苦労を乗り越えて,U2は観客と一つになるのである。
Bonoの感謝の言葉に対して,ファンも感謝の声援で応えているように感じるのは,U2からGreat Lifeをもらった人間が,確かに存在するからであろう。

 
■16 Bullet The Blue Sky   

このLiveから10日後,世界は一変する。

9.11アメリカ同時多発テロが起こったからである。

U2の発する警告。
口では「正義」を唱えつつ,侵略という「不正義」を行う者に対しての警告は,今でも有効である。
そして,その追従者たちも同様である。
"Outside is America"であり,"Into the arms of America"になっているのである。

 
■17 With Or Without You


久しぶりにステージに誰もあげず,Bonoが歌っているシーンが見られる。
女の子の膝の上で歌うBonoではなくて,ちゃんと立って歌って欲しいと願うファンには,嬉しい姿であろう。
映画「Rattle & Hum」の時のような声量は望めないかもしれないが,それを彷彿とさせてくれる,真摯な歌いぶりが見られる。
スクリーンに映し出される,ゆっくりと回転する星座の群。
とても幻想的な空間を作り出してくれる。
U2のLiveが素晴らしいのは,空間演出にも優れているからであることを,再認識させてくれるのである。

 

■18 One

曲の始まる前,BonoはU2の5人目のメンバーとも言われるマネージャーのPaul McGuiness への感謝を述べている。
20年以上前,まだ演奏もおぼつかなかった頃からU2と共にいて,ここまで引っ張ってきたPaulの功績は,巨大なものがあるだろう。

またBonoは,曲中で自分の兄Normanのことを歌っていると思われる 。 "My sisters"は複数形なのに対し,"My brother"と単数形で歌っているのである。
NormanはBonoとは少し歳が離れており,顔の作りも多少異なっている。
Normanはダブリンで,1998年にNUDEという"環境系スープカフェ"とでも呼べるファーストフードのチェーン店を始めた。味はまぁまぁであったが,少し値段が高かった印象がある。NUDEが日本にも進出するようになったら面白いが,その日は来るのだろうか。

Bonoの家族と言えば,父親BobはOneのプロモに出演している。スクリーンに映し出されていたのは,バッファローの映像であったが,Bonoは歌いながら,Bobの死を追悼していたのかもしれない。

演奏中,Edgeのギターを上下に振ってビブラートさせている奏法が見られる。真似すると,Edgeになった気分が少し味わえるのでお勧め!?

 
■19 Walk On

Elevation Tourのトリを飾るに相応しいナンバー。
曲の合間にLarryの横に置かれたセットリストがちらっと見えるが,最後の曲は"Walk On"である。

ラストの曲ではあるが,それは決して終わりではない。
U2の姿勢を象徴しているかのような,Walk onのメッセージ。
スクリーン一杯に映し出される歌詞。
Hallelujahの歌声。
それらが一つとなって響き渡ると,生きる元気をもらえた感じがするのである。
人生様々な困難があっても前向きに歩き続けることの大切さ。
それがU2がくれたファンへのメッセージであろう。

このSlane Liveは,U2の20年以上のキャリアをまとめ上げたような,とても象徴的で貴重なLiveであったと言えるであろう。

 
Bonus Materials: 【付】Mysterious Ways

この曲のLive演奏で魅力なのは,何と言ってもベリーダンサーである。
そしてこのステージでは,とても可愛いらしいダンサーが踊ってくれる。
Bonoの次女Memphis Eveが途中から登場するのである。
少し恥ずかしがりながらも,笑顔を浮かべて踊る姿はとても微笑ましい。
顔はどちらかと言えば,Bono似と言えるのではないか。
過去に"Mysterious Ways"で踊っていたEdgeの奥さんMorleighに指導を受けたのかもしれないと想像すると,楽しく思えるのである。
因みに,Bonoの4人の子どもは,長女Jordan,次女Memphis Eve,長男Elijah Bob Patricious Guggie Q,次男John Abraham である。
長男の名前は,ファンの間で話題となったが,愛称を付けるとしたら,やはりQちゃんであろうか。

将来U2のメンバーの子どもたちで,バンドを作ることがあったら面白い。勿論,Memphis Eveには,ベリーダンサーとして踊ってもらおう。