From Sonicnet: U2 Cap New York Show With Tribute To Terrorism Victims U2、ニューヨークでのショウをテロ犠牲者への追悼で締めくくる Finale includes roll call of those lost on September 11. フィナーレで9月11日の犠牲者の名を読み上げる。 http://www.sonicnet.com/news/archive/story.jhtml?id=1450385 NEW YORK -- 「Sunday Bloody Sunday」の半ばで、ボノはステージを取り巻くハート 形の通路をゆっくりと歩き、星条旗を持つ若い女性の前で立ち止まった。彼は手を 伸ばして旗を受け取り、胸の前でわしづかみにして持ち、YankeesのTシャツを着た ギタリストのエッジがその場を去って歩いて行く傍らで、数秒間深々と頭を下げて いた。  これが、Madison Square Gardenで行われた90分のレギュラーセットの中でU2が 9月11日に関して表明した唯一の意志表示であった。政治的な活動で知られるこの バンドにおいてこういったことは奇妙に思えた。特にボノはことあるごとにIRAが 武装を解除し始めたことに感動していると言及しているので、ことさらそう思えた。  「今日は俺たちにとって特別な日だ。IRAが武器をベッドに置いたんだよ」と、胸に 赤いハートをあしらった黒のレザージャケットを着たボノは、満面の笑みでそう言った。 「この決断を下した人々に感謝したい。さあ、今度は市民の権利だ。それが俺たちが 求めなきゃならないものだ」  ボノにとっては、テロリストの集団として知られるIRAについてのコメントから 引き続きOsama bin Ladenやアフガニスタンでの戦闘に言及するのはたやすいことで あったろうが、しかし彼はそれをせず、「Stuck in a Moment」「Bullet the Blue Sky」 や「New York」といった曲に代弁させていた。  U2はそういった表現の仕方を続けたが、アンコールになると、「One」の演奏の 時にはステージ後方の巨大スクリーンに9月11日の犠牲者のリストを次々と映した。 まずはじめにNYPDとFDNYの犠牲者が、続いてハイジャックされた飛行機の乗客と クルーの名前が出てきた。そして演奏が「Peace on Earth」になると世界貿易センター ビルで亡くなった何千もの人々の名前が流された。プロジェクターはアリーナの壁にも 名前を次々に映し出した。そのため、会場が人の名前という涙で洗われているような 感覚に襲われた。  このような強烈な幕切れにもかかわらず、コンサートは決して惨めでも苦しくも なかった。その晩はずっとU2はまるで生き生きとしたベテランのように次々と ヒット曲を演奏し、観衆は歌い、踊ることで応え、その3時間は音楽が緊張と恐怖を 洗い流した。自惚れ屋のように尊大に歩こうが、救済者のように腕を広げようが、 エッジと偽の決闘を行って死んだふりをして倒れようが、ボノは自分のサングラスの 形のように会場を包み込み、彼の声は連夜の公演でやや疲れているように聞こえたが、 彼のカリスマは少しも衰えていなかった。そしてボノが優しくささやいたり、吼えたり カメラに向かってポーズを取っている横で、ベースのアダムとドラムのラリーは ソリッドで駆り立てるようなリズムを打ち鳴らし続けた。  情熱の洪水「Angel of Harlem」の後、ボードを持った女性がボノからコメントを 引き出した。「アメリカは広告の価値を知っている国だね。この若い女性はギターを 引きたくて、コードを知っているようだ」 この女性はステージに引き上げられ、 一見即興のような「Knockin' on Heaven's Door」のためにギターを手渡された。 彼女はマイクを取ってDylanの声をまね、しばらくボノよりも喝采を浴びた。 「 I'm sick and tired of this war New York City is the best place Knocking on heaven's door 」  Big Apple(=New York)への賛辞がその夜のモチーフであった。そして「New York」の 後にボノは声高に言った。「ここNew Yorkでは、誰も人のことをおかしな奴だとは 思わないね。もし君がムスリムであっても、イスラムへの厳格な信奉者であっても、 New York Cityの一部なんだ。スリも、ロックスターも、誇大妄想狂でもピーナッツ 売りも、みんなうまくやっていける」  ショウのほとんどは今まで回ったアメリカの各公演とほとんど変わらなかった。 もちろんU2は「Elevation」「I Still Haven't Found What I'm Looking For」を 演奏した。「Pride」演奏中にはMartin Luther KingのPromised Landのスピーチの 一場面をスクリーンに映し、「Bullet the Blue Sky」では巨大な懐中電灯(註: サーチライト?)を持ち、観衆の顔を照らした。  それからU2はMarvin Gayeの「What's Going On」を高音で鳴り響くキーボードや 迫力ある掻き鳴らされたギターの音で物悲しい調子で演奏した。この曲はボノが 先導するアフリカのエイズ撲滅運動のメインとなるものである。この運動は9月11日の 事件によってはぐらかされたが、それでもU2が断固として推し進める運動である。  ショウの最後の記念となる「One」の前にボノは言った。「俺達はみんなひとつだ。 この歌を祈りに変えよう。そして埃が地に落ち着き、悪が追いやられたその時には、 アフリカで何かをやろう。アフガニスタンが崩壊した後に何が起こったか、俺達は 目の当たりにしたよね。アフリカ全体が崩壊したとしたらどうなるか、君たちは 想像できるかい?」  Garbageは政治性を押さえたショウで前座を務めたが、一部のファンには驚きで あった。赤い髪と尖らせた唇。かなり体にぴったりした服を着て腰を振るGarbageの ボーカリストShirley Mansonはセクシーな女性であった。しかしMSGのステージに 彼女が姿をあらわしたとき、「Androgyny(両性具有)」は単にバンドのニュー シングルの名前を示しているだけではなかった。彼女の姿を示す言葉でもあったのだ。  短く刈った髪をプラチナブロンドに染め、黒のバイクグローブ、ダブダブの白い Tシャツ、黒のジーンズに特大のサスペンダーを身に付け、Mansonはピンナップ ガールというよりもむしろおてんば娘と呼んだ方が良く、官能的な歌姫から享楽主義の ジャンキーのようなパフォーマンスを繰り広げ、かつてのイメージに対して反抗して いた。  彼女は「Stupid Girl」で空手キックを宙に見舞い、「Only Happy When It Rains」 では適当に走り回り、奇妙なコメントを発し続けた。「Cherry Lips (Go Baby Go!)」の 前では「これは、絶望の時期を乗り越えて、より大きく、速い超人的な人間となって 帰ってきた友人についての曲よ」と言っていた。  音的には(?:sonically)Garbageは同様に感動的であった。器用にプロセッサ、 ループ、キーボードを操り、スタジオの音をステージに再現した。NirvanaやThe Smashing Pumpkins等をプロデュースしたことでも知られるドラマーのButch Vigは、 ほとんどのエレクトリックな機器をドラムキットから操り、ギターのSteve Markerと ベースのDuke Eriksonは優美さを醸し出す有機的なリズムを演奏し続けた。その結果 スタジオの音よりもエレクトリックな印象の少ない雰囲気になっていた。  「U2のオープニングを飾ると言うのは、ロックの学校に行くようなものね」と Mansonは語った。「演奏していく中でいろいろ学んでいくのよ。たぶんそうだと思う けど、観衆の反応から考えると、Garbageは教える人がいなかったとしても優等生に なれるんじゃないかと思うわ」 -- Jon Wiederhorn