From MTV Asia Online: Louis Walsh Turned Down U2 ルイス・ウォルシュ、U2を拒絶 http://www.mtvasia.com/News/International/Items/0109/0109028.html September 5, 2001  アイルランド音楽界の大物Louis Walshは、世界最大のロックバンドU2の マネージャー就任を拒否した。  Westlife、Boyzone、Samantha Mumbaらを発掘したこの男は、1980年代にU2から マネージメント依頼を受けた。しかし彼は首を振った。  Beautiful Dayのヒットで知られるU2は当時、マネージャーのポール・マクギネスを 解雇する計画を持っており、代役にWalshをリストアップしていた。  彼はこう説明する。:「あれは1980年代のある晩でした。私はダブリンにある Captian Americaのレストランにいました」  「隣のテーブルではボノ、エッジ、そしてラリーがポール・マクギネスを解雇すべきか どうかで議論していました」  「彼らは私にマネージャーをする気があるか尋ねてきましたが、私はそのままが 良いのではないかと言いました」  「私はポップスターのマネージャーであって、ロックスターのマネージャーでは ありませんからね!」 -- WENN ++++++++ From The Financial Times: U2's Fifth Member U2の5人目のメンバー http://globalarchive.ft.com/globalarchive/article.html?id=010904001552&query=Paul+McGuinness  「ポール・マクギネスには気をつけろよ」と、業界のあるベテランが私に忠告した。 曰く、ヤツは気むずかしいホモジジイだ。気分がいいときは愛想がいいが、我慢する ことを知らねえからな。自分をイライラさせたりバンドに批判的なジャーナリストは ブラックリストに載せてるって噂だ。昔はいつも強硬な態度で出ていたよ。それに 人を恨んでばかりだからな。マヌケなことは言うんじゃないぞ。それから間違った ことも言うな。このことを知っていないと、ヤツとはうまくやっていけないぜ。  私がSlane城にあるU2のバックステージでマクギネス氏にインタビューしようと 乗り込んでくるまでに、私は多くの人からこういった類の心配をされた。そして サポーティングアクトのKelisとRed Hot Chili Peppersの楽屋の間に設けられた 彼の飾り気のないオフィスに入る時には、私は神経過敏になっていた。部屋の中 には鉢植えの植物がひとつだけ、気持ちを落ち着かせるような調度品はあまり なく、ライトはほとんどついていない。U2のメンバーよりも10歳年長のこの50歳の 音楽界の重鎮は部屋の角に座っており、とても生真面目に見える。そしてとても 有能に見える。そして、正直に言うと少し太っても見える。まるで映画「The Godfather」のワンシーンのようである。彼が話すとき、私は彼がDon Corleoneの ようなしわがれ声で話すのかと予想した。従って、少しばかり聞き慣れない訛が あるものの、実際には彼が全く普通に話すことが分かって驚きと同時に安心する。  この日は私とU2にとって、特別でとてもエキサイティングな日なんです、と 彼は話し始める。U2が彼らの母国でコンサートを開催するのは、1997年以来で ある。その上、ダブリンの北30マイルの、他ならぬこの地でコンサートを開くのは 実に20年ぶりである。前回はThin Lizzyのサポートとしての参加であった。Slaneは U2にとって別の意味でも重要な地である。それは彼らの1984年のアルバム「The Unforgettable Fire」をこの地でレコーディングしたからである。「このコンサートは いろいろな意味でU2にとって重要なのです」と、マクギネス氏は熱心に語る。 「ここSlaneでは1981年からコンサートが開かれていますが、U2はその第1回目に 参加しているのです。それ以来Rolling Stones、Bob Dylan、Bruce Springsteenを はじめとして多くの素晴らしいアーティストがここで演奏しています。ですから ここで演奏をする機会を得た今年は、U2にとって素晴らしい年であると言えます」  今年はU2にとって、様々な意味で素晴らしい年となっている。予測よりも売り上げを 下回った過去数作、数年前のPopmartツアーでの厄介事などを乗り越え、U2の最新作 「All That You Can't Leave Behind」は飛ぶように売れ、Elevation 2001ツアーは 過去最大のものとなりそうである。チケットは200万枚以上売れ、Elevation 2001の チケット売上額は1億ドルを超えると予測されている。  今回は確実にお金が入ってくる。しかし、一説には収益の5分の1をポケットに 入れることになっていると言うが、U2の各メンバーとマクギネス氏がいったいいくら 手にするのか、正確なところは分からない。収益は関連企業に一度振り込まれてから 難解な迷路を通り抜けて、やっと懐に収まるからだ。新聞各紙はいつものようにU2の 資産を算出しようと試みる。例えばNews of the World紙は今年の収益を4.75億ポンド であると予測しているが、マクギネス氏によると彼の見た全ての数値は正しくない という。確かに1995年、アイルランドの経済誌がU2の収益を3億ドル以上と推定 したが、マクギネス氏はその記事を破り、ばかげたことを殴り書きして雑誌社に 送り返したと伝えられている。  しかし1つ確実なのは、マクギネス氏とダブリンとニューヨークに拠点を置く彼の 会社Principle Managementは全ての業務の中心であることである。マクギネス氏自身は 1987年にU2をマネージメントするようになってからずっとU2の5人目のメンバー であると認識されている。U2と同じ時代にデビューした他の無数のバンドが消えて しまったり、解散したり、自分たちのマネージャーを解雇している一方、U2は 今でも同じメンバー構成、マネージャーである。  「U2のメンバーと私の関係は、この24年間で大きく変化してきています」と、彼は 語る。「我々は今でも良い友達同士です。多くの成功を共に手にしてきましたし、互いに 尊敬しあっています。しかし、これほど長く続いている秘訣は、一緒にいることと、 距離を置くことの両方の大切さを理解しているからだと思います。人間は自分一人の 空間が欲しいものですし、自らの過ちから学んでいく必要がありますしね」  「同時に、U2がビジネス面でも深く関わっているところも重要です。彼らは私と 同じくらいこの音楽界にいますし、音楽が良くても交渉事がへたくそでは悲惨な結果に なることを良く理解しているのです。我々は共に決断を下します。全員が関わって いるために、その決断がひどく時間がかかったりもしますが、重要なのはすべての 事柄で全員が合意できるところを見出すことなのです。いつもテーブルに座っては、 解決策が出てくるまでずっと話し合ったりします」  かつてはインディーレーベルであったが、現在はVivendi Universalグループの Universal Musicの一部となっているIsland RecordsがU2と結んでいる異様に 印税率の高い契約も、バンドが継続している要因のひとつである。アルバムセールスに おける彼らの取り分は、一説には28%前後と言われている。すなわち、U2がポップ ミュージック界の歴史上、指折りの稼ぎ頭であることを物語っている。  実際、アルバムに関する取引は、U2のビジネス上の実績の中で最も著しい成果 であろう。彼らはThe Joshua Treeの利益を現金でもらう代わりに、Island Recordの 株式を10%保有することにした。そして1989年にIslandがPolyGramに買収された際には 2,000万ドルもの利益がU2に転がり込んだ。そのほぼ同時期に、彼らは自分たちの 作品に関する著作権を買い戻した。つまり、他のアーティストと異なり、U2は自分で 自分の曲を保有していると言うことになる。  マクギネス氏が現在の状況に満足しているのは明らかだ。「今までにIslandとは ひとつの契約しか結んでいませんが、時と共にその内容が劇的に変わってきているの です。最初の契約内容は、印税率は低いし貸付金額も大したことがない、ごく普通の ものでしたし、著作権はIslandが保有していました。しかし、今は全く様相が異なり ます。印税の率も貸し付け限度額も高くなり、幾度にも渡る交渉の後には著作権も 4人のメンバーの元に戻ってきたのです。これは非常に稀なことですし、この状態に なるには何年もかかりました。私はU2と私で成し遂げたことを誇りに思っています。 一般の方はレコード会社がいつもアーティスト側に圧力をかけていると思っている かもしれません。しかし、U2にとっては全く状況が違うんですよ」  しかし、U2はここ数年は評判が揺らいでいた。彼らの前作Popは、リリース後の リアクションが鈍く、それ以前に発表されたメインストリームのアルバムの再現は ならなかった。The Joshua Treeの売り上げ1,700万枚と比べて、700万枚は見劣りが する。マクギネス氏はかつて、U2にとって1,000万枚以下の売り上げは期待はずれ と語ったことがある。これに続くPopmartツアーは様々な災難に苛まれ、チケットの 売り上げ不振についてあれこれ書き立てられた。  今でもU2のコンサートには全て出向いて、ショウのあとはメンバーと感想を述べ 合っているというマクギネス氏は、当時は道をそれてしまったことを認める。「U2は Popは未完成のまま世に出てしまったと言うだろうと思います。挑発的なタイトルPopを 冠するからには、完璧に仕上げたポップなシングル候補を持っていなければなりません。 しかし、ツアーの日程が迫っていたので仕上げにかける時間を削ってしまいました。 いろいろな試みをし過ぎたために時間がなくなってしまったこともあります。それから、 Islandの執行役員が替わってしまったので、融通が利かなかったということもあります」  「その後のPopmartは財政面のコントロールを間違えて損失を出してしまいました。 意気込みすぎたと言ってもいいでしょう。時々名案が思い浮かぶと、それを予算度外視で 組み込んでしまったりしていたのです。北米やヨーロッパではたくさん稼いだんですよ。 しかし、ショウの機材全てを持ち込んだために、日本、南アフリカ、オーストラリアや 南米ではお金を使いすぎてしまいました。南半球の国々では赤字だったんです」  それと同時期に、マクギネス氏はU2と10年以上仕事をしていた会計士のOssie Kilkenneyのせいで大損をしてしまっていた。マクギネス氏は彼の名前を聞いた途端 表情を変え、その出来事について語るのを拒む。「Ossieについて、私に何を言えと 言うんですか?」と、彼は長い沈黙のあとに語りはじめる。「母がよく言っていました。 ある人物について良いことがひとつも浮かばなかったら、その人物については何も 言ってはいけないと。私は母の忠告に従います。あれは確かに大きな損失でした けどね」  Nasdaqに上場しているClear Channel Communicationsの子会社である、プロモーターの SFXと共に、マクギネス氏とU2はPopmartでの過ちを繰り返すまいとElevationツアーの 計画を練りに練った。マクギネス氏は、以前はKPMGの上級社員であったTrevor Bowenを 新しい会計士として招き、経費と予算の詳細な算出と、いろいろなツアー形態における コスト試算を依頼した。  今までのスタジアムツアー形態よりもアリーナがよいという判断はU2によって 下されたが、マクギネス氏は、結果として数分でチケットが売り切れるなど、 U2のイメージを飛躍的に向上させた点を評価している。「我々は1987年以降は 屋外で演奏をすることが多く、剣闘士的立場からいうと(gladiatorial way)まさに こちらのアイデアを実現できたのですが、あのような巨大な空間に満ちたエネルギーを 屋内に充満させるのもエキサイティングなんです。それでキャパが2万人といった 小さな会場を選択することに帰結しました。ある意味、需要に応えないのは大切な ことなんです。我々は全ての会場で売り切れになって、その町、あるいは国を立ち 去った後に人々が『ありゃ、見に行けば良かった。U2はまだ人気があるんだった』 と考えてくれるといいなと思うのです」 Island Recordsのメディア担当ディレクターとして1977年から1990年にかけて マクギネス氏と共に仕事をしていたRob Partridgeは、マクギネス氏の戦略の中で ツアーの占める位置が非常に高いことを指摘する。「初期のU2はアメリカ全土を 巡る過酷なツアーを行っていました。しかも、西海岸や東海岸だけでなく、中西部も です。かなり長期間にわたって演奏し続けた効果が出て、アメリカ人はU2を アメリカのバンドとして見なすようになったのです」  マクギネス氏は、他の新人バンドがアメリカで熱心にツアーをしないということに 疑問を持っているという。「イギリスのバンドがアメリカで成功するのが不可能に 近いと皆が受け止めているのは、恐ろしいことです。これは成功を求めての投資が 少なかったことが原因で、アーティスト側の努力と熱意の欠如の結果でもあるの です。アメリカをツアーしてきたというイギリスの若いバンドに会うと奇妙な感覚に 襲われるのですが、実際には12回のショウを行っただけと言った場合が多いのです。 アメリカの聴衆はすぐそこにいるのですが、彼らを取り込むには時間をかける必要が あるのです」  U2と同じで、マクギネス氏も今年を原点に戻ることをベースにしているように 見える。彼はU2とは関係のない、例えばリバーダンスのサウンドトラックの販売、 アイルランドの独立系テレビ局TV3の共同創設者就任などのベンチャーで成功を収める 一方で、LeisureCorpへの投資、Motherレーベルの立ち上げといったサイドビジネス では、もがき苦しんでいる。  「結局のところ、the Longpigsというグループとともにもう少しで成功を掴む ところまでは何回か行ったものの、Mother Recordsは失敗に終わりました。冗談 抜きで、レコードビジネスよりもマネジメントの方が好きなんです。詰まるところ、 現在の仕事が好きなんですね。だから、U2のマネージャーとして名が知られている ことには非常に満足しています」  それでもなお、マクギネス氏はいくつかのU2とは関係のない事業を行っている。 彼はダブリンのGate TheatreのディレクターMichael Colganと組んで、Julie Parsonsの 著作「Mary, Mary」の映画化に取り組み、一方でイギリスのシンガーPJ Harveyや ダブリンのシンガーソングライターPaddy Caseyのマネジメントも手掛けている。 マクギネス氏はPrinciple Managementは新人にも門戸を広げていると語る。  「他の多くのアーティストからもマネジメントの依頼があるんです。中には 大手のレコード会社が、契約下の大物アーティストのマネージャーに不満があって 打診してくることもあります。彼らは人目を忍んで私のところまでやってきて、 『我々が○○を解雇できたら、△△をマネジメントしてみませんか?』と言うの です。これは私の好むやり方ではありませんが、業界の誰もが私の電話番号を 知っているようです」  マクギネス氏がU2のアメリカでのレコード会社がAll That You Can't Leave Behindと同じ週にJay-Zのアルバムもリリースしたことに激怒するところに、彼の U2にかける熱意があらわれている。「我々のアルバムがアメリカで1位にならな かったのには、本当に頭に来ましたね。特に不快だったのは、それが同じレコード 会社のアーティストによって遮られたという事実です。Universalに必要なのは 航空交通管制塔(air-traffic controller)でしょうね」  しかし、アルバムの売り上げの話になると、また表情を明るくした。「私の予想 では、このアルバムはThe Joshua Treeの売り上げを上回ると思います。The Joshua Treeは現在1,700万枚を売りましたが、これは1987年に発売になって以来の数字です。 当時はシングルのビッグヒットがあったのですが、今回のアルバムはすでに900万枚を 売り上げています。私はこの好調な売れ行きは来年まで持続すると考えています」  「その時には別の要因も働くでしょう。我々はおそらくグラミー賞のalbum of the yearにノミネートされるでしょうし、秋には世界中で撮影されてきた映像を編集した ツアースペシャルがあります。クリスマス前にはライブのDVDも発売されますので、 見通しは明るいです」  「重要なのは、アルバムごとに新しく若いリスナーを獲得することです。昔からの ファンが今でもU2を好きでいてくれるのはもちろん素晴らしいことですが、新規に 獲得することが最重要なのです。そして、U2がキャリアの中で最高の仕事をして いるという現実があります。彼らは疲れる素振りも見せません。もしアイデアが枯渇 したら、その時は彼らだけでなく、私も同様に立ち止まって考えるときなのでしょう。 しかし、彼らが立ち止まると思いますか?」